ひかりの瓶
矢野衣美さんの作品を見ていたら、先日読んでいた「色即是空 空即是色」の話しを思い出しました。
『Kobe Bottle Art Exhibition』
開催期間:2021年11月2日(火)~11月7日(日)
開場時間:13:00~19:00(最終日16:00まで)
会 場:兵庫県立神戸生活創造センター(展示ギャラリー)
吉田さん主催の『Kobe Bottle Art Exhibition』、山村さんと矢野さんという、全く作風の違う作品が並んでいた今回の展示。それだけでも面白い。
矢野衣美さんの作品は、アップルサイダーから様々な要素を洗い流し、それでも最後に残ったもので構成されたかのような画面が印象的。
近づいて見ると、色々な色が共鳴しあい、混ざり合って迫ってくる。いまあたかも光の塊であるかのように見えます。しかし離れて見ると、そこにアップルサイダーそのものが出現するのです。この感覚が非常に面白くて、何度も近づいたり、遠ざかったりして、楽しんでいました。主催の吉田さんが「ひかりの瓶」と表現されていた理由がよくわかります。
その感覚を楽しんでいた時、「色即是空 空即是色」という話を思い出したのです。
「現世にあるあらゆる物事や現象には、すべて実体はなく、空無である。と同時に、その実体のないものが縁によって結びつき、私たちの目に見える存在になっている」
一般的に言われている「色即是空 空即是色」の解釈はこのような感じでしょうか。色と空の概念は、仏教の考え方を理解する上で非常に重要で、私自身も、その真の意味を理解しているとは言い難いのですが。しかし、もう少し自分なりにかみ砕いて解釈すると、
「色(物質)がバラバラに分解されると、それが何であったかは分からなくなる。しかしそれは消え去り、この世から無くなったわけではない。物質を構成する粒(分子、原子、素粒子など)の状態にまで分解されて、何者か分からなくなり、空を漂っているのだ。そうやって漂う粒達は、いつの日かまた、縁でつながれば、再び色(物質)として、(元に戻らなかったとしても)形を持つようになるのだ」
という感じになるでしょうか。まさに私が感じた、矢野さんの作品の印象、そのものではないかと。
アップルサイダーを残していくこと。それはアップルサイダーという物質そのものに執着するのではなく、「縁をつないでいくこと」が肝心なのではないかと感じました。神戸の清涼水関連の振興と、その後継者の発掘というお題に、アートが何ができるのか。その答えは、そこあるのではないかと感じました。『Kobe Bottle Art Project』という取り組み、その成果を見守って行けたらな…と思います。