三日月と獅子、そして太陽

主に、訪問した展覧会について、感想を書くブログです。

全ては大地へ還る

神戸市御影にあるギャラリー「Space31」を訪問。山村幸則氏と吉田延泰氏の二人展「Relation」を観覧しました。作品の素材は、白鶴酒造株式会社から提供された、使用済みの空き瓶。様々な色の空き瓶が、二人の作家によって、新たな生命が吹き込まれました。今回は山村幸則さんの作品を…

 

f:id:Hirolyn:20211005123248j:plain

 

山村幸則 吉田延泰
「Relation」
2021.9.12(日)-9.26(日)
※火曜日と水曜日は休廊
13:00-19:00  
Space31

 

山村さんの作品は、ファーストコンタクトで童心に帰り、その後深く考える、というような作品が多い気がします。「何だか面白い!」からの「面白い理由を考える」の流れですね。

 

今回は、床に玩具を並べ、蹴っ飛ばして散らかす、子供のような気分にまず包まれました。格好よく書けば「神になったかの様な全能感を感じた」というところでしょうか。

 

床に並べられた、不思議なカタチをした作品群。色々なモノを想像させるその形が、どの様にして生まれたのか。その制作方法を山村さんに聞いて、納得することが出来ました。個人的に、芸術家に作り方の詳細を聞くのは、反則行為だと思うのです。しかし、山村さんの場合、その場に有るものから想起し、作り方も含めて作品を生み出していきます。その作品の制作過程までもが、ひとつの「アート」といえるのです。ですから、逆に聞かなければ、作品の真意は伝わってきません。この辺は、山村さんとお話すると、実感できると思います。

 

「大地に吸収された水が、再び空へ昇ろうと地表に顔を出している。天に昇ろうともがく、様々な表情の水滴たち。やがて自分自身も立ち昇る水につつまれ、混じり合いながら、一緒に空に還り、最後は雲になる」

 

作品の中に立っていて、最後に湧き上がってイメージがこれでした。考えてみれば、作品の素材になっているガラス(瓶)も、そして中身の日本酒も、その主原料は、大地から得られる物質(恵み)です。

 

日本酒の原料といえば、言わずと知れたお米、そして水。それが菌の力を借り、糖化と発酵という過程を経て、産み出されたもの。もちろんその原料は大地からの恵み。

 

一方で、ガラス瓶を構成するガラスは、珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、石灰石ドロマイト、芒硝(ぼうしょう)といった原料を混合し、高熱で溶解して作られます。これらの原材料も全て、大地から得られる物質。

 

ガラス自体はリサイクルされているとはいえ、元々は大きな循環の輪の一部だった物質を切り離し、それが人間の生活に欠かせない形となって、小さな輪の中で循環しているということがわかります。

 

作品制作過程を聞いていると、山村さんは、ガラスをリサイクルという形ではなく、再び大地に還し、日本酒と同じ様に、大きな「循環の輪」へ戻すことを試みたのではないか、と感じました。そんな気持ちのまま、床に並ぶ作品を見ていると、大地に浸透した水が、再び空へ昇ろうとしている水滴のイメージが浮かんできたのです。空に昇り、雲となって空を流され、また大地へ還る。

 

人間もまた、循環の輪という、でっかいものの一つに過ぎないのだなと。

 

 

ja-jp.facebook.com

 

 

www.hakutsuru.co.jp