三日月と獅子、そして太陽

主に、訪問した展覧会について、感想を書くブログです。

三日月と獅子、あるいは太陽

 

『三日月と獅子、或いは太陽』 これは中学生の頃から、ずっと取り憑かれている言葉。「或いは」なんて、普段漢字にしないのに、敢えて漢字になっているのが実に厨二病臭く、逆に気に入っていた。『かわいいアフリカ やさしいアフリカ』 を訪問した帰り道、そんな事を思い出したのでした。

 

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「かわいいアフリカ やさしいアフリカ」

2021.9.15(木)-9.20(月)
10:00-20:00 ※最終日18:00まで
阪急うめだ本店 9階 アートステージ

 

とてもユニークな表現者、中尾さんの投稿で発見した、『かわいいアフリカ やさしいアフリカ』。アートの展示ではなく、いわゆる雑貨販売のイベントなので、「何か出会いがあるだろうか?」と思ったのも事実。しかし、あの中尾さんが楽しそうに写真を撮っているし、関東でバンドをやっている友人の知人(遠いな)が、近くで個展をやっていることもあったので、思い切って訪問してみました。

 

話は変わりますが、私は初対面の人、特にその人がお洒落だと、話す時にとても緊張する人間なのです。そんなとき、目の前にある「モノ」にのめり込むまで、とても時間がかかるのです。そういう場合、声を掛けられないよう(笑)、足早に会場をグルグル回り、気を落ち着かせます。その様子は、多分とても挙動不審。不審人物とはこういう人だ、そんな見本に十分なり得るという、変な自負があります。

 

会場を2〜3周ほどするうち、心が落ち着きを取り戻し、鎮まったところで、やっと作品との対話を始めることができました。あれやこれやと考え、いろいろと見てまわるうち、中央に設置されているブースで、強く惹かれる染め物と出会ったのです。

 

初めは2羽の鳥を染め上げた布地。次に太陽と眩しい黄色を背景に向き合う恋人。そして、様々な精霊と対話し、祈りを捧げる場面を描いたもの。驚くべき密度の、色の渦で染め上げられな布地。圧倒的なエネルギーの「圧」を感じました。そこがたまたま、西沢さん(別名:新聞女さん)の会社が出展しているブースだった、というのも面白いなぁ…と。

 

気になった作品の作者は、ブルキナファソ在住のテオドール・ゾマさん。“力”を感じる、ろうけつ染めでそんな言葉がぴったりの作品を産み出す人です。西沢さんによると、彼は精霊のマスクを作る一族の出身だとか。仏師とか能面師の様なイメージでしょうか?

 

であれば、表面的なカタチを作るだけでなく、カタチに魂を埋め込むことが、生まれながらの、彼の宿命だったのかもしれません。布を染め上げるときも、無意識にそうやっているんでしょうか?それが、作品から溢れるエネルギーの源なのかもしれません。

 

でも、いま振り返ってみると、ゾマさんの作品に強くひかれた理由が、もう一つありました、それは、作品にしばしば登場する、多くの「象」の存在。5月に亡くなった友人のバンド、『YORIE』がマークに使っていた動物、それが象だったので、無意識に引き寄せられたのかも。ひょっとすると、彼がゾマさんに引き合わせてくれたのかな?

 

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そんなこともあって、最初は象か、あるいは中高生のときに似ていると言われたキリンを欲しいな、と思ったんですよね。でも眺めているうちに、何故かライオンが染められた作品に惹かれまして。どういうわけか、これだけ他と違って見えたんですよ。裏面から見ると、太陽そのものに見えるところも気に入っています。

 

そしてその日の帰り道、阪神電車に揺られながら、ふと冒頭の言葉を思い出したのでした。

 

優しくて、でも不思議な表情をした獅子を、カバンに詰め込んで。